その夜。
星龍の倉庫。
琉生は外で煙草も吸わずに空を見ていた。
その隣に海里が来る。
珍しく二人きり。
「琉生」
海里が呼ぶ。
「なんだ」
短い返事。
海里は少しだけ笑った。
「お前も気付いてんだろ」
その言葉に。
琉生は黙る。
海里は続けた。
「愛葉ちゃん限界だ」
風が吹く。
長い沈黙。
そして。
琉生がゆっくり目を閉じた。
「……ああ」
初めて認める。
認めてしまう。
愛葉を見ていられないと。
そしてその頃。
部屋で一人座る愛葉は。
震える指で窓を開けた。
冷たい夜風が流れ込む。
胸の奥で。
小さな声が響く。
――逃げたい。
その願いは。
もう止められなかった。


