そもそも、こんなの普通の令嬢だったら言わない。
本当に、私は普通の令嬢とは違う。残念な女、と言われても何も言えない。
「普段の騎士団の制服もよく似合ってるが、ドレス姿もいい。今日のテレシアも綺麗だ」
「っ……」
「君のドレス姿を最初に見られて、嬉しいよ」
こんな事言われたら、期待してしまいますよ……リアム。
「……そろそろ、向かいましょう」
「あぁ。だが一つ忘れものだ」
そう言いつつ、懐から何かを取り出した団長様。私を鏡の方に向かせて後ろに立つと……
「これで完璧だ」
私の首元に、キラキラ光るネックレスが付けられた。とても綺麗な、赤い宝石の付いた、ネックレス。
まるで、団長様の瞳のような、綺麗な宝石。
つい、一緒に映る団長様を鏡ごしに見つめてしまった。何か言いたくても言えなくて。でもそんな私の心境を汲み取ったのかまた少し微笑んできた。
「さぁ、行こうか、レディ」
「あっ……」
そう言って手を引かれてしまった。レディ、だなんて言われ慣れていないからいろいろと狂ってしまう。
そして、馬車に乗ったこの瞬間に思い出した。そういえばパートナーは団長様だったなと。近衛騎士団事務所でそう教えてもらったはずなのに、ここに来て忘れていた。団長様を最初に潜入させるための協力者じゃない、私は。
けれど、パーティー用の紳士服がとてもよく似合っていらっしゃるから目のやり場に困る。
これは任務。そう、任務だ。超エリート集団である近衛騎士団が行う任務なんだから、そんな余計な事は考えちゃいけない。



