「……化けましたね」
「お客様は細くて背が高くいらっしゃいますからね。姿勢も綺麗でいらっしゃいますからドレスが映えますわ」
「騎士でいるのが勿体ないくらいでございます!」
大きな鏡の前には、信じられないくらいにちゃんとしたご令嬢が立っていた。そう、ちゃんとしたご令嬢。
狩猟大会の際に団長様からいただいたドレスも寮母にちゃんと着せてもらったけれど、こんなにゆっくりと姿見で自分を見る事はなかった。そして今、まじまじと見た私の姿に、私もちゃんとご令嬢になれたのかと衝撃を受けた。
団長様が選んでくださったこのドレス。紫のドレスに、金色の刺繍が施されている。手はボロボロでタコだらけだけど手袋を用意してくださったから隠せている。
こんなドレス、きっと重いだろうな、と最初は思っていたけれどそれほどではなかった。肩は出ているけれどちゃんと肩紐が付いているから、もし走ったりしても大丈夫だと思う。流石、人気ブティックだ。
本当に、とても綺麗なドレスだ。けれど、見るたびに私がこんなに綺麗なものを着ていいのかな、と思う。騎士の道を歩いている私が、着ていいのかと。
任務だから地味なものだと思っていたのに、こんなドレスを着ることになるとは思わなかった。
「……剣、は……駄目か」
なんて事を呟きつつ鏡の前で背中を見たりしていたら、部屋に入ってきた人物が一人。この屋敷の主である団長様だった。私と目が合った瞬間、口を少し開けて目を見開いていた。
何となく恥ずかしくなり目を背けた。以前もドレス姿を見られたはずなのに、今日は特に恥ずかしいというか、何というか。けれど、気が付けば団長様は目の前に立ち両手を取っていた。
顔を上げると、団長様の少し微笑んだ表情が見えた。
「これにしてよかった。よく似合ってる」
よく似合ってる、だなんて……以前着たドレスの時も、彼に言われた。それ以外に言われた事があるのは両親くらい。王城騎士団に入団し制服を着た時に言われたくらい。
顔が火照ってしまった。きっと手袋ごしで握られてる手も熱くなってしまってる。
「……これでは剣を持てません」
何も言葉が浮かばず、咄嗟にそう言ってしまった。
こんな事しか言えない私は、どうしようもないご令嬢だろうか。
「だがナイフくらいは隠せる」
「……」
そう言ってはいるけれど、その表情からしてナイフを持たせる気はないと言っているように見える。



