「……近衛騎士団長様に選んでいただけると、光栄です」
「近衛騎士団長様、か」
その呟きを聞いた途端、くるっと身体を回されてそちらに向かされ、顔を至近距離で近づかせてきた。軽く抱きしめられてしまっているから、逃げられない。どうしよう、心臓の音が煩い。
「朝、ベッドの上で何と言った?」
「っ……」
確かに、リアムと呼べという圧力をかけてはそう呼ばざるを得なかった。けれど、それは私の部屋だったからだ。人払いをしているとはいえ今こんな所でそれを言うのはだいぶ勇気のいる事。だいぶ恥ずかしすぎる。
けれど、今それを言わないと許してもらえなさそうでもある。
そう、これは任務だ、任務。潜入捜査中は仮面をつけているから名前を呼ぶ事はルール上禁止されている。けれど、もしつい癖で団長様と呼んでしまってはアウトだ。だから、呼び慣れていた方がいい。そう自分に言い聞かせないとどうにかなってしまいそうだ。
「……リア、ム」
「そう、いい子だ。さ、私に選んでほしいんだったな」
そう言われると、私が違う意味で選んでほしいと言ってしまったように聞こえてしまう。そうじゃない、と訂正したいところではあるけれど、一体何と言えばいいのかが分からない。
これは、ただ私はドレスがよく分からないから助けてもらおうとお願いしただけ。だいぶ格上の近衛騎士団の団長様にお願いだなんて恐れ多いわけではあるけれども。そう、ただそれだけ。
けれど……この心臓のバクバクが治まらない。団長様に聞かれでもしたら、なんと思われてしまうだろう。それがただ怖く感じてしまう。
ドレスの方に向き直ったのに、いきなり手が腰に移動した。そのせいで分かりやすいくらいに肩が上がってしまう。これはもう絶対にバレてしまった事だろう。今日の私は最悪だな、はは……
先ほどまで遠い存在と思っていたのに、今はとても、とても近い存在に思ってしまった。
「なら……これにしようか」
団長様が選んだドレスは、意外なものだった。



