「やはり仕事中とはいえ名残惜しいな」
「あっ」
そして、軽いキスを一つした後に抱き上げられ、部屋にあるソファーに降ろされた。私の頬に触れる手は、とても優しくて温かい。
「だが、この先は終わった後の楽しみにしておこう。君は休んでから仕事に戻ってくれ。私は先に戻る」
「……はい」
キスを一つ残し、行ってしまった。
途端、静寂が訪れる。そうだ、今は仕事中だ。こんな事をしている暇はない。けれど、近衛騎士団長が国王陛下のそばを離れていいのかと聞きたくなる。
……何残念がってるんだろう。自分は。
とりあえず、私も落ち着いたらすぐに見回りに戻らなきゃ。
残念、という気持ちはあるけれど……さっき褒めてくれたことが、嬉しくて舞い上がりそうにもなっている。私は子供かと言いたくなるくらい。
でも相手が近衛騎士団長様なのだから仕方ない。私達とは比べ物にならないくらいの、雲の上の方なのだから。しかも、そんな方から剣まで貸していただけた。こんなもの、下っ端の騎士団員には贅沢すぎる。
そう、贅沢すぎるんだ。贅沢すぎるにも、程がある。
そう思うと、この部屋から出たくないと思ってしまう。この部屋を出れば現実に戻ってしまうから。もう少し、この幸福感に浸っていたいと思ってしまった。



