騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


「テレシアに寄り付く元婚約者達も……」

「……」

「テレシアを拒絶する者達も……」

「……」

「自分の利益のために近づく者達も……」

「……」

「全て、排除したいと思ってしまう」


 排除。一体その言葉の意味を聞きたいところではあるけれど、この方は近衛騎士団長。もし、私が先ほどお返しした剣が、この方によって鞘から抜かれてしまったとしたら……

 そう思うと、生きた心地がしない。


「あ……あの……近衛騎士団長様……?」

「……テレシアは優しいな。仕方ない、君の望まない事はしないと心がけよう」


 そう言うと、少し身体を離しキスをしてきた。微笑みながら、甘いキスをしてくる。

 私は今、元婚約者達の命を救ったのだろうか。けれど、間違いないのは、私が先ほど第二騎士団副団長と会話しているところ、そしてあの騒ぎを見ていたという事。

 命拾いしたようだ。あの人達も。

 きっと、この方が剣を抜いたとしたら……この国の貴族達の人口が減ってしまうだろう。


「君はやはり素晴らしい。ドレスを着ていても、団服を着ていても」

「っ……」

「まさかケーキ用ナイフで仕留めてしまうとは思わなかった。だが、無茶に変わりはない。剣が間に合ってよかったよ」


 私は今、褒められているのだろうか。それとも、怒られてる?

 もし褒められているのだとしたら、その相手が近衛騎士団長様、雲の上の人達を率いる、エリート中のエリートの方だと思うと、嬉しさがこみあげてくる。

 さっきのもやもやした気持ちと、お父様が首都に来てしまうのではという危機感が、もう私の中から消えてしまうくらいの嬉しさだ。


「ん?」


 そんな彼に、顔を覗かれてしまった。まるで、心内まで覗かれてしまっているような気分だ。けれど、褒められ慣れていないから、どんな顔をしていいのか分からない。


「ぁ……ド、レス、汚してしまって、すみませんでした……」

「あぁ、あれはただの付属品だ。主役の君が何事もなかったのだからそれでいい。それに、そのドレスも、靴も、装飾品も私が君に贈ったもの。君の好きにしてくれていい」

「あ、いえ、その……」


 あの装飾品達に使われているものは、きっとジュエリーだ。あんな高級品を女子寮に置いておいてもいいのか全く分からない。それにどう保管した方がいいのかすらも。

 どうしたら、いいんだろう。