「……何故お前がそれを持っているんだ」
その一言は、今彼が腰に提げている剣よりもきっと鋭いだろう。視線からも、怒りを露わにしている事が分かる。
それ、というのはきっと私の腰に提げている近衛騎士団長の剣だ。彼は第二騎士団副団長だから、私よりも顔を合わせる機会があったはずだし、私よりも騎士歴が長い。なら、これが近衛騎士団長のものだとすぐに分かる。
「……交流会の際、お借りいたしました」
「借りた、だと……? 奪ったの間違いじゃないのか」
「……こんなただの騎士団員が近衛騎士団長の剣を奪うほどの実力を持っているわけがないではありませんか。狩猟大会の行われた会場である森から、交流会の会場へ3匹の動物が向かってきたことを目撃し、一番近くにいた私に団長が貸してくださったのです」
きっと、この件も彼の耳には入っていた事だろう。けれど、私が仕留めた事に対してはあまり信じていないようにも見える。
「幸い怪我人は出ませんでしたが、森から煙が立っていた事を目撃しました。陛下は護衛の近衛騎士団を数名森へ派遣させ、その代わり私を陛下の護衛に付けました」
「何、だって……?」
苦虫を嚙み潰したような表情を見せた彼は、一体何を考えたのだろうか。きっと報告は受けていただろうから、恐らく信じていなかったといったところだろうか。
けれど、私が近衛騎士団長の剣を持っていた事に、そこまで怒りを露わにするか。
確かに近衛騎士団長はこの国を代表する騎士であり、軍事力を管理するお方だ。そして、王族を長年支持する名家であり、名のある騎士達が何人も出る一族、ロドリエス侯爵家のご当主でもある。
王城騎士団員達の憧れである近衛騎士団長の座に、長年座り続けているお方。そんな方の、騎士であることを証明する大事な剣を、ただの団員が持っているのだからそれは怒るか。



