騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 その時だった。私達に話しかけてきた女性が一人。


「こんにちは、お嬢さん方」

「サリー夫人! ご機嫌麗しゅう」

「えぇ、御機嫌よう」


 何となく見たことのある女性。とっても素敵なブロンズヘアーの、大体私のお母様と同じくらいの歳の方。警備中に何度か見た事がある。確か、マダムと呼ばれていたような。

 彼女は開いた扇子で口元を隠し、にこやかに微笑んだ。


「あら、見覚えのない方がいらっしゃるわ」

「テレシア・マーフィスでございます。マダム」

「あらあら、マーフィス男爵のお嬢さんだったのね。そうねぇ、何となく似ているわ。今日は交流会の方に?」

「はい」


 と、いう事は私が騎士をしている事を知っているという事。

 きっとマダムも私の婚約破棄の事は耳に入っているはず。私がここにいる理由は、何となく予測が出来たはずだ。次の殿方を漁りに来た小娘、だなんて思われてしまうかもしれないけれど、本当なのだから言いようがないが。

 そしてマダムは、私を頭の上からつま先まで品定めするかのように視線を動かした。


「とっても素敵なドレスね。贈り物かしら」


 にっこりと微笑むマダム。果たして、その扇子は何を隠しているのだろうか。何となく、緊張感を覚える。


「マダムもそう思いますか? わたくし達もそう話していたのですよ。きっととっても素敵な殿方からの贈り物のはずだわって」

「そうねぇ、私もそう思うわ。だってとってもお似合いだもの」

「本当に、マーフィス嬢にお似合いだわ」


 なるほど、マダムも女性騎士に対してあまり良い印象は持っていないらしい。マダムの事はあまりよく知らないけれど、服装からしてきっと上位貴族の方だ。