そして、ぱらり、ぱらりと参加者達が入場してくる。私達は集まって話をしていたけれど、そちらに向ける視線が少し鋭いようにも感じる。
「あら、マーフィス卿ではなくて?」
「あら、今日はマーフィス嬢かしら? こんなドレスを着ている姿を見ることが出来るなんて、驚きましたわ。とっても、お似合いですよ?」
いつもの、上位貴族のご令嬢3人。余程、私の事が気になるらしい。私のドレス姿を見てはクスクスと笑ってくる。
一体これを贈ってきたのは誰なのかを言いたいけれど、それでは騒ぎになるからやめた方がいいだろう。
「ご令嬢なんですもの、この国王陛下主催の狩猟大会の警備員なんて務まるわけがないでしょう? 足手まといになるんだからここにいた方がいいわよ。マーフィス嬢は素晴らしいわ、自分の実力を弁えているんだもの」
「そうですか」
面倒な会話にいつものように返すと、ご令嬢達は気に入らなかったらしい。不満気な顔を向けてきた。
「……なんですの? わたくし達に文句がおありなのかしら。でも、マーフィス嬢はしょせん底辺の男爵令嬢。お父上が名のある騎士だったとしても、貴方は女性ですもの。まだ騎士をしていること自体がおかしいのよ」
「そうですわ。分を弁えなさい」
貴方はご令嬢なのだから分を弁えろ。よく言われる言葉だ。
女性は皆貴族の家に嫁ぎその家の後継者を産むことが使命であり、それが一番の幸せである。
これは社交界では基本である。とはいえ、それは王国憲法には全く載っていない。令嬢が騎士をしてはいけないとも載っていない。
これが当然のことだと誰かがそう言い出し、広め、権力で反対派を黙らせてきた。ただそれだけの事。
反対派からしたらこんなもの、迷惑でしかない。けれど、社交界の女性達は噂好きで面白がる人達ばかりなのだから、それを面白がって笑いものにする者達が大半だ。彼女達のように。
「……あなた方の中に、王国騎士団を管理する権限を持っていらっしゃる方がいらっしゃるという事でお間違いありませんか?」
「っ……!?」
「だってそうでしょう? 分を弁えろ、と仰るという事は王城騎士団に口出しが出来る権利を持っているという事でしょう。違いますか?」
「っ……」
「私は王国騎士団第三騎士団員です。騎士団の方から退職を命じられれば、ちゃんと退職届を出しますよ。まぁ、ちゃんと納得出来る理由があるのであれば、の話ですが」
彼女達の表情は、歪んでいた。自分の思い通りに行かないから腹を立てている、という事が目に見える。ご令嬢の身分で何を出しゃばっているんだ、と言われたのだから当たり前か。



