この国は、まぁ性格が悪い者達は多々いるものの、騎士団員の多さもさることながら実力のある者ばかりだ。周辺諸国は、もし大問題が起こり戦争に発展させようにも軍事力で劣っているから強く出られないのだ。
だから、騎士団に必要な医療に力を入れるため今来訪なさっている隣国と友好関係を結んでいた。けれど、こうなってくるとどうなるだろうか心配ではある。
けれど、待てよ? 私、そういえばあの時第三王女殿下に呼ばれてあのお茶会に参加させられたんだっけ。その時は、女子会だからと王女本人が護衛達を外した。
あそこには近衛騎士団長もいた。けれど、暗殺とあっては他に暗殺者がいるか分からない以上王女から離れる事は出来ない。王女本人は、自分の近くにとどまってくれた方が確率的に一番いいと思ったのだろう。となれば……私は、舐められたのだろうか。
もしそうだとしたら……非常に腹が立つな。
「それもこれも、全てテレシアのおかげだよ」
「……えっ?」
「狩猟大会では死傷者はなく、外国人商人の確保も迅速に行われ、第二王子まで辿り着くことが出来ただけでなく、今回の来訪の件でも最悪の事態を回避出来た。全てテレシアの手柄だ」
「あ、いえ、私は……」
「テレシアの、おかげだ。現に、あの隣国が計画に選んだほどの実力のある王城騎士を怪我無くすぐ捕まえてしまったのだから。婚約者の私は誇らしいよ」
……嬉しいけれど、これにはいろいろと誤解がある。決して私だけの手柄というわけではないけれど、恐らくここで私が何を言ったとしても聞く耳を持たないのだと思う。
けれど……あの犯人を捕まえたのは私ではなく第一騎士団員達という報告のはずだったのに、何故私を? あ、まぁ、私が一番先に追いかけたけれど……
でも、それを信じてくれるのは、素直に嬉しい。
「さ、早く戻って婚約届にサインをしてしまおうか」
「……あの、気が早いのでは……?」
「テレシアの気が変わらぬうちにしてしまった方がいい。それに、周りが動き出す前に先手を打つのが一番いい」
それはつまり、第三王女殿下はもちろん我が国の貴族達の事も言ってらっしゃるのだろうか。長年近衛騎士団長を務めあげている彼が言うのだからそれが最善策という事になる。となると、大人しくサインをした方がいいはずだ。
さすが、近衛騎士団長。
……いや、今は、私の婚約者と言っていいと思う。
こんな下っ端の騎士団員で、底辺の男爵令嬢がおこがましいと思ってしまうけれど……もしこれが夢物語のような現実なのだとしたら、これからを描いてみたいと思う。
「さ、テレシアのお父上には何と伝えようか」
「……きっと喜ぶと思いますよ。相手をさっさと見つけろとだいぶ催促されましたから」
「そうか……陛下は首都近くまでいらっしゃっているとおっしゃっていたから、すぐにスケジュールを確認しておこう」
「あ、あの、ご無理は……」
「ん? 無理なんてものはないさ。私の最優先はテレシア。ただそれだけだ」
恐ろしい事を笑顔で言いつつ、軽いキスをしてきた。最優先は私ではなく陛下なのでは……?
とはいえ、こんな冗談を言うのはいつもの事ではないだろうか。
いつもの事だからこそ、なんだか幸せを感じる。
今までで一番の幸福感が自分の中で溢れているように感じる。
だから、この温かくて大きな手は、いつまでも、何があっても絶対に離したくないと思う。
令嬢であり騎士でもある私をちゃんと見てくれて、そして愛してくれる人だから――



