騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


 ようやく離してもらえた時には、頭が真っ白になっていた。なかなか、呼吸が整わない。身体の力が抜けしゃがみこみそうになったところを彼が支え、抱き上げてくる。


「腰を抜かしたのか。これでは持たないぞ」


 そういえば、この人の顔、ちゃんと見た事がなかった。視界に入る彼は、整った顔に良く似合う黒の髪に、赤い瞳をしている。確か、このぎらつくほどの赤々とした瞳もあの噂の由縁に入っていると聞いた。まるで、悪魔のようだと。

 確かに、悪魔のようだ。けれど、周りが思うような悪魔とは違うように見える。

 けれど、一体どう違うのか考えている時間は全くなく、ベッドに降ろされ、彼が迫ってきて焦りと不安が襲い掛かってくる。


「明日は休みだろう。仕事で疲れているところ悪いが、あまり寝かせてやれない」

「ぁ……」

「――テレシア」


 何故私のスケジュールを知っているのかを聞きたいところだったけれど、そんな余裕は全くなかった。

 また、あのとろけるようなキスが始まった。