ロドリエス侯爵家当主で、近衛騎士団長なのだから、こんな事をしていいはずがない。それなのに、誠意を見せると言い出してこんな事をしてきた。逆に私が心配してしまいそうになるけれど……
「……いいんですか、こんな事して」
「私は大真面目だよ」
「……呆れます」
「でも?」
こんな言葉しか私の口からは出てこないけれど、恥ずかしすぎてどうにかなってしまいそうだ。そのせいで、どうにも出来ずにいる。けれど、もうこの時点で全部見透かされている事は十分に分かっている。
いや、もうすでに全部、酷い出会い方をしてからずっと、全て見透かされていたのかもしれない。
「……嬉しい、です」
「そして?」
「……ください」
「はは、はいどうぞ」
本当に、この方はよく分かっていらっしゃる。私の両親より私の事を分かっているんじゃないかという危機感すら覚える。
けれど、その時だった。
「お待ちください」
ソプラノのような綺麗な声が、会場内に響いた。そして、国王陛下方の前に出てきた声の主は……つい数日前お話した、来日なさっている隣国の第三王女殿下だった。
あの時とは全く違う、明らかに怒りを露わにしている彼女の表情が私に向けられた。そして、国王陛下の方に向き直った。
「陛下、これでは話が違います。昨日、話し合いをなさったではないですか!」
昨日の話し合い、とは……ロドリエス侯爵と隣国第三王女との婚約の話だろうか。
話が違う、という事は、そういう事になる。



