そして私は冷や汗が止まらない。いつも鍛錬を怠らず続けているはずなのに、足が震え出している。ここから逃げ出したいとまで思ってしまった。
「女性としての美しさと騎士としての誇りを持つ素晴らしい女性は他にはいませんからね。ロドリエス侯爵家としても申し分ない女性です」
「ふむ……これではマーフィス男爵から文句が出る可能性があるが、私としては似合いと見える」
そんな国王陛下の発言に、つい耳を疑った。国王陛下が、私達二人がお似合いだとはっきりと口に出したからだ。しかも、今日、ここで。この会場に隣国の第三王女殿下がいるにもかかわらず。
お父様の件に関しては、新しいお相手が見つかったのだから逆に喜ばれるのではないかと思ってしまうが、それは黙っておこう。早く殿方を見つけろと催促の手紙を送る人なんだから。
「では、陛下方から公認していただいたという事でよろしいでしょうか」
「あぁ、もちろんだ」
「だ、そうだよテレシア」
公認? 陛下が、お認めになられた?
私は、底辺の男爵家の令嬢。王城騎士団の、第三騎士団団員。それなのに、お認めになられた?
そんな夢のような話が、あるのだろうか。
誠意を見せる。先ほど団長様ははっきりとそう言った。きっとこれが、団長様の言う誠意というものなのだろうけれど……これは、ずるいと思う。
きっと、私が気にしていた身分という壁を消すためにこんな手段を取ったのだろう。けれど……
これは、絶対に破棄の出来ない、周りは口出しの出来ない婚約だ。
ここまでやらなければ意味がない、と言っているようにも見える。なんと恐ろしい方なんだ、この人は。そんな方と婚約しても、大丈夫なのだろうか。いや、もう手遅れではある。
戸惑いと、あと尻込みしてしまい何と答えたらいのか分からなかった。むしろ、こんな私が応えてもいいのかとも考えてしまう。そんな私に、向き合うように立ってきた団長様。
「なら、婚約してくれるだろう?」
そうして、目の前に出してきたもの。それは……懐から出した小さな箱だった。これは、中身を確認しなくても何が入っているのか分かる。



