騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!


「あ、あの、団長様……今、お仕事中……」

「何か言ったか?」

「……」


 声が、恐ろしい程に怖いと感じた。これは抵抗しないほうがいいと、警告音が脳内に響く。

 行き先が休憩室だったなんて、恐ろしいにもほどがある。団長様は静かに入って、器用に鍵をかけてから中にあったソファーに私を降ろし……迫ってきた。


「さて、浮気をした可愛い恋人にはお仕置きをしなくてはな」


 にっこりと微笑んではいるけれど、目が笑っていない事に寒気を感じた。

 けれど、ちょっと待ってほしい。今、この方は恋人と言っただろうか。


「……あの、どこのどなた、でしょう……?」

「貰ってあげようかと聞いて了承したのはどこの誰だ?」

「え……」


 貰ってあげようかと聞いて、了承した……?

 一体、いつの事を……いや、待てよ。


「ま、さか……」

「酒が入っていたとはいえ、ちゃんと覚えていなかった君が悪い」


 待て待て待て待て、思い出せ、あの時の記憶を。あ、あの時は……

 その部分が全く思い出せず、むしろ恥ずかしい記憶ばかり出てきて顔が火照ってきてしまった。こんな時に何てことをしてるんだ私はっ!


「あ、あの、も、申し訳、ございま、せんでした……」

「一体どれに対しての謝罪だ?」

「……先ほどの、男性の、件で……」


 その言葉で、今度は冷ややかな視線を向けてきた団長様。笑顔のはずなのに、おかしいな。

 全く、目が向けられない。


「……僕のものだと勘違いさせて、あんなにベタベタ触らせて……私が許すとでも思ったか?」


 声が、怖い。笑顔のはずなのに、怖っ……

 でも、妾になると言ってしまったから、これはどうにもならない。相手は隣国の王族なのだから。


「絶対に、もう君の視界に入れさせない」

「……」

「テレシア、君は私だけを見ればいい。いいね」

「……ハイ」

「よし、いい子だ」


 ようやく柔らかい笑顔に戻ると、キスをしてきた。