「京……聞こう。ちゃんと家族の人と話そうよ……」
京は無言で首を振った。
体を小さく丸めるその姿が、どうしようもなく悲しい。
「京……。綾ちゃん……」
声のしたほうを見ると、京パパと京ママがいた。
「京……帰ろう。ちゃんと直のこと話すけん……」
京は黙ってうずくまったままだ……。
「綾なら俺が送るけん、お前はちゃんと話、聞いちょれ」
京パパの後ろから律兄が現れ、それでも京は動かない。
……綾が、背中を押してあげる。
「……京? 聞いて?」
京だけに聞こえる声で囁くと、ぴくりと京が動いた。
「……京には、直姉も律兄もお父さんもいるでしょ? お母さんだっているんだから。せっかくの家族なのに、仲良くしなきゃダメだよ」
京がゆっくり顔を上げた。涙で濡れた瞳で、真っ直ぐ綾を見る。顔を見られたことにホッとして、自然と笑みがこぼれた。
「お父さんたち、愛してくれてるから。京も応えてあげて?」
京はお父さん達を見たけど、すぐに目を逸らした。
迷うよね。不安だよね。大丈夫だよ、“家族”は絶対、壊れたりしないから。