「やめんさい」
京パパが黙っていた口を開いた。ソファーから立ち上がると、京の前まで歩み寄る。
京は叩かれた頬を気にする素振りも見せず、父親という存在を睨みつけていた。
「……直が邪魔だと思ったことは一度もないが。再入院のことだって、直は承諾しちょったけん」
「理由が知りちょーって、何回言わすけん」
「……まだ言わん」
「直姉が本当に承諾したと思っちょるんか」
「……何のことだけん。直は分かったと言っちょった」
「親のくせにわからんのか……」
京の顔は曇っていき、綾はぎゅっと胸を押さえる。
「直姉がかわいそうだ……! 早く学校行って勉強しちょーって、あんなに言っちょったんに! ……っお前らみたいな親はいらんが!」
「京っ! お前の子供じみた考えで家族の仲悪くすんなや!!」
律兄の言葉が、リビングから出て行った京を突き刺す。京は足音荒く、家を飛び出して行った。
床に、ひと粒の涙を残して。



