「綾ちゃんはひとりっ子?」
「はい。ひとりっ子です」
京ママとふたりでキッチンに立ち、綾は洗われた皿を拭きながら笑顔で答える。
「綾ちゃん標準語よね? 噂の美人転校生ってやっぱり綾ちゃんだったけんね〜」
「えっ! 美人じゃないですっ!」
「ねぇお父さんっ。美人よねぇ?」
声に気付いてこっちを見た京のお父さんが微笑む。
「そうだね。とても可愛いらしい子だけん」
優しく笑ったその顔は、やっぱり京に似ていた。
京の大人バージョン……。
「え、と……」
言葉が見つからず、顔を熱くさせながら俯いた。
「京に似てますね……」
瞬間、笑い声がリビングに響く。
「やあねぇっ! 京がお父さんに似ちょるけん!」
「え……あっ、そっか! ごめんなさい!」
「ふふっ。綾ちゃんは? 誰似?」
流れていた水を止めて、京ママが微笑む。全身を流れているはずの血液が、一瞬止まった気がした。



