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「それ、隠しちょー?」
花見に行く準備をしたあたしを見て、玄関先で京が少し不満そうに聞いてくる。
あたしの首もとには、サクラ色のストール。
「隠すに決まってるでしょっ」
京を外に追い出し、家に鍵をかける。
「嫌だから? 恥ずかしいから?」
少し眉を下げて聞いてくる京に、勝手にキュンと音をたてる胸。
「……見せたくないのっ」
キスマークを見られると、その行為を見られたみたいで。京の愛に触れられたみたいで。
他の人には見せたくない……なんて。
「ふーん……」
「ふーんって他人事すぎじゃ……っ、」
「なんかやっ」
「いんや〜? お顔が赤いなぁ〜と思ってぇ〜」
「赤くないけんっ!」
プイッとそっぽを向く京が可愛くて、笑いがこみ上げる。
桜が舞う道を、京の後ろをついて歩く。
クスクス笑ってると、頬を染めて眉を寄せた京が振り向いた。あたしは立ち止まって首を傾げる。
京は、デニムジーンズのポケットに手を突っ込んで、悔しそうな、恥ずかしそうな顔をしてる。
「……どしたの?」
「あー……いや……あれだけん」
「あれって?」
「……それでいいけん」
「何が?」
「……今みたいに、綾はずっと、俺のそばで笑っちょればいいけん」
瞬間、春風が吹き抜け、桜の花びらがいっせいに舞う。
桜吹雪の中、優しい笑顔を見つけた。あたしの、愛しい人。
「……京も、ずっとそばで笑っててね」
京の胸に抱き付くと、額に優しいキスをしてくれた。



