――――――…
「何すんのぉ!? 最悪! 京のバカッ」
「はははっ!」
信じられないっ! いきなりどこに行くかと思えば……っ。
「夏ならまだしも春だよ!?」
数分前、夕刻が過ぎた静寂な町に響いたのは、あたしの悲鳴と激しい水音。それから、京の笑い声。
あたしはなす術もなく、京の手によって川に投げ込まれた。
「あぁ〜もう……何すんのさぁー!」
「綾が変だからじゃろー」
「彼女を川に投げ込む京のほうが変でしょ!」
川に立つあたしは、河原に座る京に怒る。
だいたい何でいっつも川なの!? どんだけ川が好きなの!? 京は川の申し子かっ!
「昨日からずっとソワソワしちょるけん。気になるじゃろ」
ツンとそっぽを向く京に、あたしは何も言い返せない。
バレてたなんて……。
「バレバレだけん」
「だからって何で川なの!?」
「川が好きじゃから」
「……野生児」
あたしはザバザバと音を立てながら川からあがる。
「すっきりしちょー?」
京が差し出した手を握り、笑顔を浮かべた。
「おかげさまで、ねっ!!」
「はっ!?」と京が驚いたのは、あたしが思いっきり京の手を引っ張ったから。
バシャーンッ!と水しぶきがたち、川に落ちた京は俊敏に立ち上がった。
「冷たぁぁぁああ!!」
「当たり前でしょぉ!?」
これで放り込まれたあたしの気持ちがよく分かったでしょっ。
「もう信じられないっ! 寒い! 帰るっ!」
「ごめん綾〜」
「ほんとだよっ」
「俺ら、何しちょるんじゃろな……」
「誰のせいだか分かってる?」
「ははは! 俺だや!」
「もう……笑いごとじゃないよ……」
川に投げ込まれたっていうのに、ケラケラ笑う京にときめいてしまうあたしは、正真正銘のバカだ。



