―――――…


「綾ぁ〜っ! 早く!」

「ちょっと待って!」


バタバタと騒がしい朝。暖かい陽気につい二度寝してしまい、今日から新学期だと言うのに遅刻しそうな勢いだ。


「寝癖が直らないぃぃ〜っ」

「理一に直してもらえばいいじゃろーが! 早くっ」

「ふたり共、朝から元気ね〜」


玄関でソワソワしている京と、洗面所とリビングをバタバタ行き来するあたしに、京ママは呑気に廊下で笑っている。


「カバンッ!」


リビングに慌ただしく入ると、これまた呑気にコーヒーを飲んでいる律兄が笑った。


「8時15分だぞ〜」

「いやーっ!! 遅刻決定っ!」

「綾ぁぁぁあ!!」

「はいぃぃいい!」


「いってら〜」と笑う律兄に手を振り、玄関に向かう。


「いってらっしゃ〜い」

「「行ってきます!」」


ニコニコ笑って見送る京ママに返事をし、家を飛び出した。



「わぷっ!」


ブワッと春風が吹き抜ける。


桜が咲き乱れる季節。


あたしと京は、今日から高校2年生。