「綾っ! ごめんっ!!」


突然リビングのドアが勢いよく開き、綾たちは驚いた。


「パパ……。どうしたの?」

「あ、友達来てたんだね。お見舞いかな? ありがとうね」


綾以外の3人が頭を下げるのを横目で見ながら、パパに近寄る。


「何かあったの?」

「あ、あのね、仕事入っちゃって……ごめん!!」


顔の前で手を叩くパパをよく見ると、スーツを着て、仕事用の鞄を持っていた。


パパは昼夜問わず、急な仕事が入ることが多い。


「うん。綾なら大丈夫だから行ってきていいよ」

「ごめんね!! 本当にごめんねっ」

「わかったから! ほらっ、早く行かないと!」


綾は笑いながらパパの背中を押して、リビングのドアを閉め玄関まで向かう。


革靴を履いてるパパの背中を見つめていると、「あ!」とパパが声を出して振り向いた。


「帰りにママのお墓参りするけど、どうする? 一緒に来るなら、1回帰ってくるけど」


体がビクリとはねる。

ママのお墓は引っ越す時に、こっちに移したから、いつだって会いに行ける。


「……今日は、いいや」

「そうだね……ちゃんと寝てなきゃダメだよ! じゃあ行ってくるねっ」


せわしないパパを見送り、リビングに戻った。