「っ!! ……びっ……くりしたぁ……」
コートのポケットに入ってる携帯が静寂な町に突然鳴り響いた。
ディスプレイを見ると、着信は……パパから。時刻はもう8時を過ぎていた。
「……もし」
『どこにいるのっ!!』
キーンと耳に響く、パパの声。
『どこで何してんの!? 何でベッドにいないの!? 退院しますって何!? 何で勝手に退院しちゃうの!?』
……パ……パパ。答える暇がないんだけど……。
『聞いてんの綾っっ!!』
「き、聞こえてるよパパ」
『どこにいるのっ』
「大丈夫だよパパ〜。雪降ってたから、ちょっと外に出たくなって……」
『大丈夫じゃないっ!!』
で……ですよね……。
携帯を耳に当てながら、あたしは再び歩き出す。
『ほんとにもう……戻ってきなさい! 今どこにいるの!? 病院の外?』
「家の近くに帰ってきちゃった」
『……綾ぁぁ〜〜……』
脱力するパパの姿が目に浮かぶ。
面白い。そう思うあたしは、悪い子かもしれない。
「夕方には家に帰るから!」
『帰るからって!! 今病院大騒ぎなんだよ!? ちょっと綾!? あっ』
プツッとパパの声が途切れた。
携帯の電源を落として、ポケットに戻す。
ごめんねパパ。早速迷惑かけちゃったね。
でも、まだどうしても行きたい場所があるの。
あたしが京を、好きだと確信した場所に。



