「……ん……」
ゆっくり目を開けると、辺りはまだ薄暗かった。
……6時半か……。
何だろう、すごく体が軽い。体と言うより、心と言ったほうが正しいのかもしれない。
まさか胸の痛みが、心からくるものだとは思いもしなかった。
毎日毎日、あたしは怯えていたから。
いつ死ぬか分からない恐怖と、大切な人を残して死ぬかもしれないと言う罪悪感。
だけどもう、怖くない。
怖くないよ、京。
君があたしを、救ってくれたから。
「……あ……雪……」
窓の外を見ると、粉雪がちらついていた。
不意に、胸が疼く。
「…………」
ソワソワと体を動かし、目に止まったのはパパが持ってきてくれた今日の私服や、携帯が入った袋。
パパが迎えに来るのは、確か8時だったはず……。
パパは昨日、京にあたしの目が覚めたことだけを伝えてくれた。
あたしは退院後、みんなと会う予定でいたんだけど……。
「どっちにしろ……今日、退院だし……」
ちょっと、行きたい場所がある。
考える前に、袋に手が伸びる。
数分後、三波 綾と表札が掛かった病室は、もぬけの殻となった。



