「おつかれさま〜」


みんなの分のココアをテーブルに置いていると、リビングに入ってきた陸と京がポカンとしている。


「綾……元気?」


陸が不思議そうに綾を見て言った。


「あ、うん。熱はね、出ない体質なのっ」

「あたしもびっくりしたけん。リビングで普通に起きちょるんじゃもん」

「あははっ。ごめんね!」

「じゃあ何ともないんかや?」


外は雪でも降っているのだろうか。少ししっとりと濡れている黒髪を耳に掛けて、京が綾を見つめた。


久しぶりでドキッとしたけれど、平静を装ってニッコリと笑う。


「うん。たいしたことないよ。ごめんね、せっかくお見舞いに来てくれたのに」

「大丈夫ならいいんだけん。心配しちょったから」

「……ん」



京……ずるい……。ふとした時に優しさを出すなんて。


綾はいつだって、京に想いを乱されてばかりだ。