俺が覚えちょる思い出を、綾が覚えてないことに、何度も泣きそうになった。


思い出なんて必要ない。そう思った。未来が、大事なんだと。本気で思った。


だけどやっぱり、無理だよ綾……。


大切な愛しい思い出を。あんなこともあったなって、未来で共に、笑いたいんだ。


綾の隣に、俺じゃない誰かがおるなんて、耐えられそうにないんだ。


東京から帰ってきた時、綾の隣には理一がいて、本当は張り裂けそうなくらい胸が痛かった。


綾は知らんじゃろ……?

俺がどんなに、綾を想っちょるのか……。


バカみたいに好きで、もう好きだなんて言葉で片付けられるほど、簡単な想いじゃないんだよ。


俺はまだ言っちょらん……。誓いしかしちょらん……。


頼むから……目を開けて。


まだ、言葉にしてないんだ。


「……っ」


言わせてほしい。


「起きてっ……頼むが、綾っ!!」



言わせてほしいんだ。



――「愛してる」と。



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