「……綾……」
綾の肩をつかんでいた手を、涙で濡れた頬へ添える。
「俺が……そばにおるけん……」
綾の頬を両手で包んで、俺は再び、誓う。
「……昔言ったが。……俺が全部……受け取っちゃるって」
綾の虚ろな目が、やっと俺を見据えた。
「今から言うこと、忘れんで………もう二度と、言わんけん……」
これが、最後だ。
「ずっと一緒におる。守っちゃる。俺が綾にとって、何よりも大きい存在になっちゃるけん」
辛いことがあったなら、俺が取り除いちゃる。
不安なことがあったなら、俺が解決しちゃる。
ひとりが嫌なら、俺が一生、そばにおっちゃる。
「俺が全部、受け取っちゃるが」
綾の瞳から、涙が溢れかえった。
「生きて、綾……」
生きて、笑ってよ。
出逢った頃の、あの眩しいほどの笑顔を、また俺に見せて。
それだけでいいんだ。
それだけで、幸せなんだよ。
「俺の幸せは……綾の存在」
綾への愛が、形を変えて、涙となってこぼれ落ちた。
「……ありがとう」
そう小さく囁いた綾の瞳が、突然色を変えたように、鮮明になった気がした。



