「……すごく遠くに立ってるママを見つけて……あたしは追いかけるの。……ママはどんどん大きくなって、追いついてくの……。でもね……追いついてるはずなのに、ママの顔が見えないの……そのうちママがしゃがみ込んで、両手で顔をおおうの……」
そう話してくれた綾の言葉が、ずっしりと胸に落ちる。
綾が夢を見る理由を、その夢の意味に、気付いてしまったから。
……綾、ひとつ聞きたい。
何で綾は、お母さんを追いかけちょーの?
お母さんを求めちょるから? 夢でいいから、逢いたいから?
……違うじゃろ。
「何だか怖くて……ママは何か言ってるんだけど……目が覚めると覚えてないの……」
綾……。
いったいいつから、死を望んどった?
俺は眉を寄せて目頭をおさえる。涙が、あふれてきたから……。
綾がお母さんの夢を見ているわけが、わかった気がする。
お母さんは、綾に伝えちょーことがあるんだ。
綾、怖いと思うんは……お母さんが言っちょる言葉を、綾が拒んどるからだけん。
お母さんのもとへ行きたいんに、それをお母さんが許してくれんからじゃろ……?
頼むが、綾……。
怖がらんで、その言葉を受け入れて……。
お母さんは……こっちに来ちゃダメだって、泣いちょるんじゃから……。



