「ごめん京……京……こっち向いて……」
嫌だ。こんな泣き顔、見られたくない。
「……見てるよ……ママの夢……病院で目を覚ました時から……ずっと見てる……」
……怖かったんじゃろ? 悲しくて悲しくて……毎晩ひとりで泣いちょったんじゃろ……?
「あたし、昔も……ママの夢見てたんだね。そのことを……京に言ったんでしょ? ……何て言ってたの? あたし……」
……あの時、綾は泣いちょったよ。
泣きながら体を震わせて、すがるように俺を見つめちょった。
「――真っ暗な場所で……お母さんが歩いちょるって。……呼ぶと、笑って立ち止まってくれるんに……綾が走っても走っても、追いつかん。……そのうち見えんくなって、……綾がひとりぼっちで残されたって……」
綾が言っちょった夢を思い出しながら、言葉を並べた。
俺はその、綾の夢を何回も想像して、何回も考えた。
その夢を見る意味は……何か重要なことがあるんじゃなかろうかって……。
「……昨日も、同じ夢かや?」
黙ってる綾に、背を向けたまま問いかけた。
「……似てるけど……違う……」
……違う……?



