「………け……い……?」
気付けば、涙が溢れていた。
つかんでいた綾の手を離して、俺は綾に背を向ける。
「……京……」
やめろ。何も言わんでいい……。
綾が悪いんじゃない。俺が、弱いだけなんだよ。
……ごめん、綾……。
俺は、綾を救えんのかもしれん。
「京……ごめん。……ごめん、あたし……」
一緒に生きることが、なんでこんなに困難なんじゃろう。
俺はただ、綾が好きで好きで、仕方ないだけなんに。
「……京」
俺の背中に、弱々しい声が突き刺さる。
「……言えよ綾……俺は何のために……お前のそばにおると思っちょるが……」
綾が抱える闇を……お母さんの夢を見る意味が分からんから、綾と一緒に、理解しようとしちょった。
綾が夢を見ても悲しまんように、支えになって、そばにおって、一緒に乗り越えて行こうと。
共に、生きていきたいと思うから……笑顔が見たいから。
綾のことが、好きじゃから……。
俺は、綾のそばにおるんだよ。
綾が俺を必要とせんなら、そばにおる必要がないけん。
俺の存在は、無意味になってしまう。



