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木々に囲まれた田舎町は雪が積もり、寒さがいっそう厳しくなっていた。
「綾、どこほっつき歩いちょるが」
俺は家の前で寒さに震えていた。俺の家に来るはずの綾が時間通りに来ないから、電話をかけている最中。
『えっとね……森』
アバウト……。携帯を耳に当てながら、周りを見渡す。
「あのな、この町には森しかなかろーが。見渡す限り木、山、森!」
『怒らないでよーっ! 京の家の近くだよ! なんか、来ちゃった……』
俺の家の近く……?
頭の隅で、勉強会をした時に綾がとった行動を思い出した。
「……動くなよ。今行くけん」
携帯を閉じて、綾がいるであろう場所に足を進めた。
……勉強会の日。綾が俺の家に入る前に、道の先を見つめた時。
期待してはいけない。
そう、思っちょった。
けど、もし、今向かう場所に綾がいるならば、俺はきっと胸が締め付けられる。
きっと、泣きたくなる。
――綾。記憶の中で俺を忘れても、心の中では俺を覚えちょるんじゃなか?



