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「じゃあな〜!」
「お邪魔しましたっ」
時針が夜9時を指している頃、各々が帰路に着いた。俺はもちろん、綾を家まで送る。
「道、覚えられそうかや?」
スニーカーを履きながら綾を見ると、苦笑いしながら「頑張る」と言った。
「綾ちゃんっ」
「あ、今日はお邪魔しました」
パタパタとリビングから母さんが現れて、綾はお辞儀する。
「今度、泊まりに来んさい」
「え……?」
母さん……バカ……ッ。
「すぐ帰るからっ」
俺は急いで、ポカンとする綾の腕を引っ張る。
「え? ちょっ、けっ……おっ…お邪魔しました!」
綾を外に連れ出して玄関の戸を閉める。
つかんだ綾の腕を離し、先に歩き始めた。綾が小走りで隣に来る。
頼む。聞くな。
何も聞くな……。
「……ねぇ京」
「……ん?」
「あたし、泊まりに来たことがあるの?」
「……」
真っ白な銀世界に、サクサクと雪を踏みしめるふたりの足音が響く。
「……綾はさ、思い出したいかや? なくした記憶を」
綾の目を見ずに言い、なかなか答えない綾に痺れを切らした時、綾の口が開いた。
「先生がね、無理に思い出す必要はないって言うの。でもあたし、ずっと考えてた……。どうして京のことや、陽子たちのことだけ、忘れちゃったんだろうって」
それは……俺らが……俺が、綾を追い詰めたから……。
「……きっとすごく、大事にしてたんだろうなって思ったの。大切で仕方なくて……理由は分からないけど、守りたかったのかなって」
「………」
綾……バカなこと言うな。
そんな……綾らしい答えを、言わんで。



