「みんな遅いね」
母さんが持ってきたコップにミルクティーを注いでいると、綾は落ちつかない感じでキョロキョロと部屋を見渡した。
「いっつもそうだけん。毎回毎回、集合時間より30分遅れて来よる」
「ほんとに? あ、ありがと」
綾の前にコップを置くと、コップに手を添えながら俺に微笑んでくる。
「あたしもそうだった?」
……まさか聞かれるとは思わんかった。
「綾は時間通りだけん」
「そっか〜。よかった」
「学校は遅刻するけどな」
「……あたしもそう思ってた」
苦笑いする綾に微笑む。
綾は、俺らと遊ぶのが好きだったから、いつもウキウキしちょったよ。
待たされるのを分かっていながら、楽しみで仕方ないって感じじゃった。
「わっ! すごいねっ!」
「え?」
綾はパッと笑顔を見せて、上を指差した。見上げると、大きな天窓。
「あぁ。夏はプラネタリウム」
「えーっ、いいなー!」
天窓を見上げる綾。昔と同じ反応に口を開こうとしたら、先に言ったのは綾だった。
「来年、見せてね」
そう言ってニッコリ笑う綾に、胸がじわりと熱くなる。俺は開いた口を閉じ、微笑み返すことしかできんかった。
無邪気に、来年と言った綾。来年という言葉が、ひどく重く感じる。
来年………見せちゃるけん。必ず、絶対に。一緒に見よう。
星が瞬くあの夏空を、再び君と見られるなら。
俺は、何だってする。



