「お邪魔しまーす……」
緊張しながら綾が玄関で靴を脱ぐと、リビングから近づく足音が聞こえた。
「いらっしゃい、綾ちゃん」
「おー、綾。元気?」
「あ、こんにちは……。お邪魔します」
母さんと律兄にお辞儀をする綾。
「俺の母さんと……これとは関わらなくていいけん」
「お兄様に何て口の聞き方じゃ! ほんっと可愛くねぇ弟だよお前は! 綾っ、俺のことは律兄と呼びなさい!」
「あ……えっと、お兄さん……」
「律兄って呼ばなきゃダメッ」
ツンと横を向く律兄、いったいいくつだよ……。
律兄に圧倒されていた綾は、クスクス笑って笑顔を見せた。
「じゃあ……律兄」
「かわえー! 妹できちゃった!」
「綾、関わらないほうが身のためだけん。俺の部屋2階だが。行こ」
「けーいー! テメーこのっ!」
律兄を完全無視して階段を上り部屋に行くと、綾はまだおかししそうに笑っていた。
「家族と仲いいんだね」
……そうしてくれたんは、綾だよ。
「そうかもな」
俺は少しだけ笑って、部屋のドアを開ける。
「うわっ。綺麗にしてるんだね」
「綾と違って綺麗好きだけん」
「〜っうるさいよっ」
「ははっ。嘘だが」
反抗してきたのが嬉しくて、つい頬が緩んでしまった。
「適当に座って」
俺はダウンジャケットを脱いでクローゼットにしまう。綾は丸いテーブルの前にあるクッションに座った。
「コートかけて貰っていい?」
「ん」
綾は黒いキルティングコートを脱いで、俺に手渡す。
……服の系統も、コーデの仕方も変わっちょらんな。
改めて、俺や理一たちのことだけを忘れているんだと実感した。



