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「ただいま」
「京! 綾の様子は!?」
家に帰りリビングに顔を出すと、律兄がいち早く声をかけてきた。
険しい顔をしている律兄に首を振る。
「変わらず。俺らの名前は覚えてもらったけん」
「そ……っか」
力なくソファーにもたれかかった律兄の隣に座ると、母さんが無言でミルクティーを出してくれた。
……綾、ミルクティー好きだよな。頭の端でそんなことを考えながら、俺はおもむろに口を開く。
「俺、綾が記憶を取り戻さなくてもいいと思っちょる」
隣に座る律兄はバネが弾かれたように俺の顔を見た。その表情から、何を言っているんだ、と伝わってくる。
「……綾のそばにおれたら、それでいいけん。笑顔で、生きちょってくれれば」
昔の記憶が戻って、もしまた綾が苦しむなら、思い出してくれなんて絶対に言わん。
「……綾を救えれば、いい」
虚ろな瞳で呟いた俺の頭を、グシャグシャと撫でる律兄。
「……律兄。……俺、間違っちょらんよな……?」
「アホ。間違っちょらん……」
どうして律兄が泣くんだよ。
泣くことなんかない。
泣くことなんか、ないんだよ。



