「綾が発作を起こすんは……悲しみや苦しみ、悩んだ時や自分への憤りを感じて、爆発しちょー時なんです」
綾はいつも、自分のことより他人のことばかり考える。何でもかんでも、自分のせいにしてしまう。
それがどれだけ危ないことか、綾も誰も、分かっちょらん。
「……それは違うが……そんな……考え過ぎに決まっちょるけん」
先生の言葉に、俺は静かに首を振る。
「綾……精神科にかかったことは?」
おじさんを見ると、額を押さえて、床に視線を落としていた。
「……あるよ。カウンセリングを……弥生が亡くなってからしばらくの間……」
「何か薬を処方されたはずだけん」
「……あ……あぁ、されたよ。でもこの町に来る前にはもう……7歳の頃には元気になっていたし」
「……非定型抗精神病薬。知っちょります? 主にセロトニンとドーパミンを遮断する抗精神病薬のひとつで、一般的診療に広く用いられちょる。
定型抗精神病薬より安全と考えられちょった非定型薬じゃけど、実は定型薬と同じに、心臓突然死のリスクを約2倍に高めることが、最近の研究で明らかになっちょるけん」
「……」
先生もおじさんも、目を丸くしていた。



