冗談じゃない。そげん覚悟なんて、するわけがない。する必要すらない。
「俺が、そんなことさせないけん」
突拍子のないことを言った俺に、困惑の視線が集まる。
「……君のことは、綾ちゃんからよく聞いてたけん」
微笑む先生に、俺は強く言い放つ。
「子供の冗談に聞こえますか」
目を丸くした先生を、睨むように見つめる。
「綾は、原因不明の病気なんかじゃないが」
「……京くん?」
「何を……言っちょるけん」
綾の10年間の苦しみを、この病の絡まった原因を、俺は東京に行ってからずっと、ほどいてきた。
「俺は、綾の治療法を探るために東京に行ったけん」
何で、中途半端な高1の夏休みに戻ってきたんか。綾に逢いたかっただけじゃない。
病の理由が、分かったからだ。
「そんな……綾は、何の……」
すがるような瞳を向けるおじさんに、俺は小さく首を振る。
「100%確かだとは言えないけん。でも、そうだと思っちょります」
「教えてくれないか……綾が少しでも、1%でも助かる方法があるなら……!」
涙を浮かべ、そう言ったおじさん。
俺だってそうだ。
次、発作を起こしたら覚悟しろだなんて。ただ見守ることしかできんなんて、冗談じゃない。
少しでも、綾が助かる可能性があるなら、俺は綾を救ってみせる。
たとえ綾が、一生俺を思い出さなくても。



