「綾……?」
おじさんの顔が、不安でいっぱいになる。
「綾ちゃん!」
綾の担当医が、息を切らして病室に現れた。
「先生……」
「よかった、目を覚ましたんだね。今看るけん」
聴診器を耳に当て、綾の心音を聞く医者。
その後も簡単な診察をしていたけど、会話は耳に入らなかった。
和也たちもみんな、困惑して立ち尽くしていた。
「うん、大丈夫みたいだけん。詳しい検査しよか。準備するから、少し待っちょいてな」
「先生……」
おじさんが、先生に声をかける。
「綾……彼らを覚えてないんです」
「え……?」
担当医は後ろにいる俺たちを見渡すと、綾に向き直った。
「綾ちゃん、この人は分かるかや?」
「……パパ」
「私が誰か、分かるかや?」
「……綾の、担当の先生」
「今、自分の年齢は?」
「……16歳」
「今の季節は?」
「冬でしょ……?」
「……じゃあ……この子たちは、誰かな」
「……、分かんない……」
綾は戸惑ったように俯いてしまった。
「……彼は? ……名前、分かる?」
彼というのは俺のことだった。
綾は恐る恐る俺の顔をうかがい、目が合うとすぐに視線を逸らして左右に首を振った。
「……少し、検査しないと……」
担当医がおじさんに何か言っていたけど、耳を塞ぎたかった。
この場から、逃げ出したかった。
綾。俺だよ……。
10歳の時に出逢った京だって、分からんのか?
……俺はそんなに……忘れたくなるほど、綾を追い詰めたんか……?



