「じゃあな」
綾の話で盛り上がり、1時間ほど経った頃、みんな帰ることになった。
「京はまだ帰らんかや?」
陽子が心配そうに、俺を見上げる。
「ん。そろそろおじさん戻ってくると思うけん、とりあえずそれまでは」
「そっか」
病室から廊下に出て、みんなに微笑む。
「みんなが来てくれて、きっと綾、喜んどるが」
「……ほんと、お前には勝てんけん」
そう理一が言ったけど、どういう顔をすればいいか分からんくて、曖昧に口の端を上げた。
……そんなことはない。
俺ひとりより、みんなが来てくれたほうが綾は何倍も嬉しがると思う。
「じゃあ。また来るけん」
和也がそう言って、みんな口々に挨拶をする。
「京もちゃんと寝ろよ」
「分かっちょーよ」
親みたいに繰り返す陸に、俺は苦笑いを返す。
「明日も来ていいかや」
陽子が落ち着かない様子で、髪を触って言った。
「綾も喜ぶけん」
「んじゃ明日も綾の話題で盛り上がっちゃいますか〜」
おどける和也の言葉に、みんなが笑う。
「じゃあ……」
気をつけて。そう言おうとした時。
───ギシッ。
と、病室からベッドが軋んだ音が聞こえた。
全員の耳に届いたのか、顔を見合わせる。
……綾の病室は、個室だ。



