両手を握って額に当て、腰を曲げて俯きながら、何分経っただろうか。
病室のドアが開いた。
「……京くん。一度家に帰るよ」
顔を上げると、おじさんが黒いコートを腕にかけ立っていた。
立ち上がると、おじさんは懐かしそうに微笑んだ。
「大きくなったね、京くん」
「……その節は……ご迷惑をおかけました」
「ははっ! 東京に行ったこと? 夢があるって立派だよ」
何て言ったらいいか分からず、足元に視線を落とす。
「綾の荷物を取りに帰るから……もう少しそばにいてあげてくれるかな?」
「もちろんです」
「僕が戻ったら、京くんも一度家に帰りなさい。……疲れただろう?」
「平気です……俺が、そばにいたかっただけですから」
おじさんは眉を下げて、俺の肩をポンと叩いた。
「君まで倒れちゃ、元も子もないよ」
そう言って、おじさんは病室を後にした。



