「おじさん……そのままでいいんで、聞いて下さい。……最近の綾、俺や陽子たちと一緒にいなかったんです」
東京で覚えた標準語で、できるだけ丁寧に話す。
「ちょうど文化祭が終わった頃から、綾の態度が変で……俺らから離れていったんです。話しかけても素っ気なくて、近づくなって感じだったんです」
おじさんは困惑した表情で、眠り続けている綾を見つめた。
「綾らしくないなって……思ってて。発作を起こす少し前から、本当に具合が悪そうで……学校にもあんまり来てなかったんです」
「学校……楽しいって……言ってたじゃないか…」
おじさんの綾を見つめる姿に、胸が痛くなる。
「俺……もしかしたらって……」
綾を見つめていたおじさんは、口を噤んだ俺に視線を向けた。
「俺の、憶測でしかないですけど。……多分綾は……こうなることを分かってて……」
真っ直ぐおじさんの目を見て言うと、見開かれた瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
「娘が……親に気を遣うなって……言っただろう?」
涙を流しながら綾を見つめるおじさんにいたたまれなくなり、俺は病室から出て廊下のソファーに座った。
綾………。
お父さんが泣いちょる。
早く目を開けて、笑顔を見せてあげろよ……。