++++side*京++++
「京くん」
薬品の匂いが充満する大きな病院の一室に、たくさんの医療機器に囲まれた綾の姿があった。
「ごめんね。ありがとう」
「いえ……平気です」
綾の父親が出張先から急いで帰ってきて、担当の医師と話をしてから、おじさんは綾の病室を訪れた。
「京くん……本当にありがとうね」
おじさんは綾のそばまで歩いて、綾の頭を撫でてから俺を見て微笑んだ。
「先生に聞いたよ……助けてくれたんだってね? 対応が早かったってほめていた……本当に……何てお礼を言えばいいか……」
おじさんの目にうっすらと涙が滲んで、思わず視線を落とした。
「……いえ、お礼なんて……」
俺はただ、自分が助けたかっただけだ。
おじさんのためじゃなく、自分のために……。
「……京くんは、知ってた? 綾がここ2ヶ月……病院に通っていたって」
「……知りませんでした」
「僕も知らなかったんだよ」
「……え?」
「親にすら言わないなんて……っ……こんなに痩せて……」
おじさんは綾の動かない手を握って、うなだれ、泣いた。
おじさんにまで言わなかったなんて……。やっぱり綾は……。