綾の体が、少しだけ上下に動いたように見えた。
「綾!!」
「三波さん!」
和也や先生が叫ぶ。人工呼吸をやめた京は綾の脈を確認して、安堵の表情をたたえた。
そばにいた陽子たちに京が何か言うと、陽子がわっと泣き出した。
京はブレザーを脱ぎ、綾にかけている。
俺の足は自然と綾に向かった。
綾のそばまで行くと、苦しそうな表情はなく、穏やかに眠っているみたいだった。
……大丈夫なんか?
俺に気づいた京が、顔を上げて微笑んだ。
「もう、大丈夫だけん」
その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「………」
言葉にならんかった。
京の綾に対する想いを、目の当たりにした気分じゃったから。