「何しちょるけん!!」
「うわっ!」
目に涙が溜まった時だった。
あたしの目の前に、大きな背中が立ちはだかった。
「綾に何しちょるが」
「はぁ!? 話しちょっただけだが」
「嫌がっちょるじゃろ」
「はぁ〜? なんかや、お前」
「おいっ、行こうぜ」
ひとりの先輩が、体育館に向かう生徒があたしたちを見ていることに気づいて、焦ったように言った。
「……ちっ……クソガキ」
悪態をついて、ふたりの先輩は去っていく。
ヤダ……振り向かないで……。
流れそうになった涙を急いで拭う。
大きな背中が、ゆっくりと振り向いた。
「……大丈夫かや?」
俯いたあたしの視線に合わせて腰を曲げ、心配そうな顔があたしの顔を覗いた。
「……平気……」
ポツリと言うと、大きな手のひらがあたしの頭を撫でる。
見上げると、優しい微笑みが見えた。
……京。
今すぐ抱きつきたい。



