「三波さんっ!」


急に視界が開けて、眩しさに目がくらむ。


「……え?」


ぼやけていた視界がはっきりすると、保健の先生があたしの顔を覗いていた。


あ……あたし朝から具合悪くて、保健室来てたんだっけ?


「大丈夫かや?」

「え……あ……はい」


女の先生はあたしの額を、タオルで拭いてくれた。


「ずいぶんうなされちょったけん……怖い夢でも見ちょー?」

「……いえ……」


起き上がって、タオルを受け取る。


「今お水持ってくるけんね」


先生の背中を見送り、タオルで顔を覆う。


「ママ……?」


怖い夢なんかじゃない。


久しぶりに、ママの夢を見た。だけど、今までと違う。


追いかけても追いかけても、ママに追いつけない夢じゃなかった。


すごく遠くに立ってるママを見つけて、あたしは追いかける。ママはどんどん大きくなって、追いついてくの。


……でも、なんでだろう。


追いついてるはずなのに、ママの顔が見えない。そのうちママがしゃがみ込んで、両手で顔を覆う。


うなされることなんかないのに……。


何か大事なことを、忘れている気がする……。