「……少し、考えます」


はっきり嫌だとは言えなかった。先生が、あたしのためを思って言ってくれたんだと分かっていたから。


先生は、手術のことについてもう何も言わないというように、カルテを机に置いた。


「とにかく、原因が分からんうちは食事と睡眠を正しく取って。運動もダメだけん。心臓に悪そうな行為も控えるように」


先生の顔を見ることなく、あたしはぼんやりと白衣を見ていた。


テーブルも、イスも、壁も白い。病院独特の薬品の香り。


病院は、好きじゃない。否が応でも、ママを思い出す。



「学校に提出する書類も書いちょーから、……お父さんには自分で話せるけんね?」

「……はい」


パパには、あと何回か発作起こしたら、マズいって言えばいいの?


言えるわけないのに。ママを失ったパパに、「あたしも危ないんだ」なんて。どういう顔して言えばいいの?



「気をつけて帰るけんね」


「……ありがとうございました」