……ママ。
今、どこにいる……?
目を閉じればいつだって思い出す。ママの優しかった笑顔。
ジンワリと目頭が熱くなった。
泣いちゃいけない。そう言い聞かせて、片づけをするパパをもう一度見てからソファーに腰掛けた。
……パパと決めたの。これからは、ふたりで強く生きていくって。
ママが守ってくれたこの命を、絶対大事にするって……。
――ママは、綾が6歳の時。4年前に事故で亡くなった。
対向斜線の車が居眠り運転をしていたらしく、綾たちのほうへ突っ込んできたために起きた交通事故。
その日は雨で、ママとふたりで買い物をした帰りだった。
今でも鮮明に覚えているのは、綾の上に覆いかぶさった血まみれのママの笑顔。
──大丈夫?──
繰り返されたその言葉以外、何も覚えていない。
ワンピースの裾をギュっと握りしめる。
ママ……今、どこにいるの……?
綾のこと、見守ってくれてる……?
ママ……苦しい……。
……寂しいよ。



