何も考えないようにして、朝ご飯も食べずに家を出た。


「遅刻しちゃうな……」


体がダルい。食欲もない。

まるで何かが欠けたみたいに、体に力が入らない。


学校に行く途中、京に別れを告げた川の横を通った。


「………」


京が帰ってきて、昔に戻ったような日々を過ごしていくうちに、京と理一に対する「大切」の意味を考えるようになった。


理一に感じる大切さと、京に感じる大切さは、全く別の感じだった。


京に感じていた「大切」は、愛しい人に対するものだった。


理一は、恩人というか友人というか、頼れる人としての「大切」だった。


だけどそれを、ふたりに伝えようとは思えなかった。


伝えたところで、あたしの運命は変わらないんだから。