「……他の誰かと、幸せになってね。絶対絶対、幸せになってね」
「……ん」
「今まで、ありがとう」
「……ん」
俯いて、ぎゅっと目を瞑る。
泣くな。
泣くな。
ずっと想ってくれた理一と京を、身勝手に突き放すあたしに、泣く権利なんかない。
「……俺は、綾がそう決めちょーなら、何も言わんけん」
「………」
「まぁ、どっちも選ばんとは思わんかったけど」
「……ごめんね」
「……仕方ないけん。それが綾の答えなら。どんなもんでも、答えは答えだがや」
「京……」
「ん?」
あたしのか細い声にも、京はしっかり返事をしてくれる。
「……この町に越してきてよかった。みんなに会えたから……ママがいなくても、寂しくなかったよ」
「……ん」
「想ってくれてありがとう」
「……ん」
「……大切に想ってくれて、ありがとう」
「何かや。お別れの言葉?」
「……綾ね……京って名前、好きだよ」
俯いていた顔を上げると、京はあたしを真っ直ぐ見つめてくれた。
みずしま けい。
京。
呼び方も漢字も、すごく好きなんだよ。
あたしは京に微笑む。



