美術室で麻実に言われて気付かされたことが、頭に浮かんだ。
京を好きな麻実だけじゃない。理一を好きな人だって、あたしのせいで傷ついてる。
……秘めていた決意が、じんわりと胸を熱くする。
あたしは真っ直ぐ、先輩たちを見て言った。
「あたしは、理一のことも京のことも、なんとも思ってません。でも、友達以上に大切なふたりなのは事実です。だけどそこに、恋愛感情はないです」
表情も変えずに淡々と言ったあたしを、先輩たちは驚いたように見る。
「でも……どう見たって理一くんは綾ちゃんが好きだけん……。後輩に聞いちょったが、理一くん……中学の時から綾ちゃんが好きだって……。そんなの、諦めるしかないけん……」
理一に告白した先輩の涙を見て、強気そうな先輩が口を開いた。
「理一くん何回も告白しちょるんに、綾ちゃん答えを出しちょらんのでしょ?」
……そんなことまで広まるんだ。この小さな田舎は……。
「綾ちゃんが……理一くんのそばにいる限り、あたし……頑張れる気がしないけん」
理一を想って涙を流してるんだろう。
この先輩も、あたしがいるから、踏み出したくても踏み出せないんだね。
あたしはブレザーのポケットから淡いピンクのハンカチを取り出し、数歩歩いて、理一に告白した先輩に差し出す。
「……ごめん……」
先輩は戸惑いながらも、ハンカチを受け取る。
あたしはそれを確認して、少しだけ笑った。



