嘘……。嘘だよ……。
だって、あの時は……。
「あ……マジで? やっぱあれ、綾で間違いなかったけんね」
「修学旅行? ……あっ、陽子と陸が立ち止まった時!?」
「は? え!? まさか渋谷駅の!?」
「和也と朋もいちょったんか」
気づいてたなんて……。
だってあの時は本当に……本当に、一瞬で……。
「……っ……」
涙が溢れる。
声を漏らさないように、ギュッと下唇を噛んだ。
あの時。中学の修学旅行。駅で京を見つけた。
気付いて欲しかった。
逢いたくて、逢いたくて、逢いたくて仕方なかった。
気づけば、呼んでいた。
必死に、必死に名前を呼んで。
一瞬でいいから、京を見たいと思った。
「何か名前が呼ばれちょる気がして……振り向いたら、すげー遠くに綾がいたけん。その後すぐ人波が襲って……」
一瞬だった。ほんとに一瞬だった。



